キャスター
PTAが変わるきっかけになるかもしれません。
先月、東京都小学校PTA協議会が、日本PTA全国協議会から今年度で退会することを理事会で決議しました。
都道府県レベルの団体が全国組織から抜けるのは異例のことで、全国の関係者に大きな波紋が広がっています。
長年、見直しが求められてきたPTAの現場で、今、何が起きていて、どうなっていくのでしょうか。
15年前から各地の現状を調べ、PTAの在り方について考察を続けている、文化学園大学教授の加藤薫さんに伺います。
加藤さん、おはようございます。
加藤
どうぞよろしくお願いいたします。
キャスター
よろしくお願いいたします。
PTAは知っていても、その全国組織があるとは、なかなかご存じない方も多いかと思います。加藤さん、日本PTA全国協議会、そもそもどういうものなのでしょうか。
加藤
はい。小学校や中学校にPTAがありますね。その上に市区町村レベルのPTA連合会というものがありまして、更にその上に都道府県レベルの連合会がありまして、そのまた上にあるのが日本PTA全国協議会、通称日本PTAなんですね。
これは4層からなるピラミッド構造で、どれにも保護者が深く関わっているんです。
それでどうして全国組織が必要なのかということなんですが、日本PTA側の主張としてはですね、全国の保護者の声を国に伝える、そして国の最新情報を全国の保護者の方に届ける、そのためには全国組織が必要なんだと、ということなんですね。
キャスター
そういう目的がある訳ですね。
加藤
はい。
キャスター
で、このほど、なぜ東京都の小学校PTA協議会が全国組織から退会することを決めたのでしょうか。
加藤
はい。2つ理由がありまして、ひとつは活動の方向性の違い、もうひとつは会費の有効活用でして、活動の方向性の違いというのは、日本PTAはですね、全国大会など、毎年何千人規模の大会をですね、複数回開催することを主な事業としているんですが、これ関わる人や組織にとってはものすごく大きな負担になっているんです。
キャスター
大変なんですね。
加藤
はい、はい。それに対して、東京都の協議会では、コロナ禍の経験も踏まえて、都内のPTAのニーズや活動の事例などを共有するなどしてですね、それぞれの学校のPTAの支援を活動の中心に据えようと、いうことですね。
キャスター
これがひとつですね。
加藤
はい。ふたつ目にはですね、会費の負担ですが、東京都の組織では全国組織に収めなくてはならない会費があって、これが大きな負担になっています。むしろそれは都内のPTAのために使おうと。そういうこともあって、退会を決めたということです。
キャスター
そうなんですね。
この退会の決定について、加藤さんはどのようにご覧になってらっしゃいますか。
加藤
はい。先ほどですね、日本PTA側が主張する全国組織の役割をお伝えしましたが、実際はですね、なかなかそうはなってないんじゃないかという、そういう声が強くて、巨大組織であるメリットというのが、少なくとも現状では認めにくい。そう私は思っています。
そういう意味で今回の決定というのは、これまでのピラミッド体制に風穴を開けた試みとして、私は大きな意義があると思っています。
キャスター
PTAは今、いろんな事情もありますよね。社会の移り変わりで。
加藤
はい。今、PTAは少子化、母親の社会進出などで担い手が少なくなって、その上、今のコロナ禍で運営を維持することがとても難しくなっているんですね。そんなPTAを支えていきたい、東京都の組織はそういう自分たちの方針に照らして、上位組織に加盟するプラスとマイナスを判断してですね、今回退会を決定したと、いうことなんですね。
キャスター
はい。
加藤
で、もうひとつ注目しておきたいのが、今年にですね、今回の東京都の動きに先立って、実は京都市でも同じような動きがあったんですが。
キャスター
そうなんですね。
加藤
はい。私なりの調べでは、これ教育委員会や校長先生の意向がかなり大きく影響して、全国組織から抜けるという方針が京都では否決されました。
キャスター
うーん。
加藤
はい。そういうことで今回、東京都が退会を決定できた背景には、教育行政からの独立性が高い、そういう特徴も関係していると思っています。
キャスター
様々な意向が絡み合っている訳ですね。
加藤
なかなか難しいんですね。
キャスター
そうなんですね。
で、今回、東京都の組織が全国組織から抜けるという、その抜けられた方ですね、日本PTA全国協議会、どういう受け止めをしているのでしょうね。大変だと思っているのか、仕方ないと思っているのか。どうなんでしょう。
加藤
そうですね、これまで日本PTAはですね、下部組織や保護者がですね、自分たちに加盟するのが当然だというスタンスをとってきたのですが、しかし、今回の東京都の決定や京都市の動きもあって、下位組織の支持を失えば、自分たちの存続が難しくなるじゃないかという、そういうことにやっと気づき始めたと思っています。
キャスター
そうですか。
加藤
はい。それを象徴する動きとして、新年度ですね、全国協議会の方ではPTA会員の意見を集約するシステムを作ろう、必要とされる日本PTAを目指そう、そういうですね、従来の方針とは大きく変わった案が示されまして、それも危機感の表れだと言えます。
キャスター
危機感を持って受け止めている、ということですね。
加藤
はい。それはいい流れだなと思っています。
キャスター
今後どう変わっていくのかも注目ですね。
加藤
はい。そうですね。
キャスター
さあ、ここまでPTAの組織をめぐる現状と背景についてお伝えしてきましたが、後半は今後に与える影響について伺います。
♪♪♪♪♪
キャスター
今朝の「聞きたい」。PTAの在り方について、文化学園大学教授の加藤薫さんに伺っています。
お伝えしていますように、先月、東京都小学校PTA協議会が全国組織からの退会を決めた訳ですが、加藤さん、この動きは全国各地にも影響を及ぼすものでしょうか。
加藤
はい。既にですね、横須賀市のPTA連合会が神奈川県の組織からの退会を検討しているということを公にしています。
キャスター
そうですか。
加藤
はい。その他、地方のいくつかの連合体組織の幹部の人たちの間でも新しい方向を模索する動きが認められます。
現在ですね、学校ごとのPTAも市レベルの連合会もですね、現場に近いところほど、参加者の減少に頭を悩ませているんですね。ま、そうなってくると、上位組織との付き合いを、労力の点からも金銭的な負担からも、減らすために、東京都と同じように退会を考える組織が増えてくるのではないかと予測しています。
キャスター
はあ。退会を考える方向が増えてくると、いうことですね。
加藤
はい。はい。
キャスター
そもそもですね、PTAと言いますと、全員参加ですとか、半強制的などと言われて、そういうイメージが強かったのですが、そういう在り方についても影響を与えるでしょうか。
加藤
はい。今回の東京都の退会の決議は、当然そこにも関わってくると思っていまして、実は10年ほど前からPTAの参加は本来、自由意志により決められるものなのだということが、少しずつ周知されてきていまして、今ではPTAに入らない保護者も実は増えてきています。
キャスター
そうなんですね。
加藤
はい。ただ、にも関わらず、一方でですね、自動的に全員会員になるんだという、そういう体制が残っているのもまた事実で、その背景には日本PTAの見解が関わっているんじゃないかと思っていまして。
キャスター
どういうことでしょう。
加藤
つまりですね、PTAの意義が分からない人がいれば、それはその人の理解が足りていないだけなんだと。必要なのはまず仲間に入ってもらって一緒に活動し、その意義を体得してもらうことなんだと。そういう思想がどうも根っこにあると思われます。
キャスター
そうですか。
加藤
はい。先ほどですね、全国組織が新しい方針を示したと言いましたが、一番注目しているのが、このPTAの任意加入、入退会問題、そういう言葉を全国組織が使い始めた、意識し始めたことなんですね。これがただ見せかけの対策ではなくて、ごくごく当たり前の本当の意味の任意加入の実現にどう取り組んでいけるのか、そこを注視していきたいと思っています。
キャスター
なるほど。どうなっていくでしょうね。
加藤
はい。
キャスター
ただ、その任意加入ということになりますと、保護者としてはですね、学校とどう向き合っていくのかという点で、加藤さん、どういったことが大切になってくるでしょうか。
加藤
はい。任意加入になればですね、PTAに入るのも入らないのも自由ということです。
キャスター
そうですよね。はい。
加藤
はい。そうなるとですね、PTAがなくなる学校も出てくるかもしれません。
しかしですね、PTAがあろうとなかろうと、先生と保護者が子どものために連携し、協力する、これは当然のことで、これまで以上にひとりひとりの保護者、先生の主体的な判断が求められるようになると思っています。
キャスター はい。
加藤
これまで私、PTA問題を考えてきて、気になっているのが、日本の文化が持つ負の側面と似た構造で、日本文化にはですね、長い物には巻かれろと言いますか、上の存在、目上、そして周りのみんなに忖度をして同調する傾向が認められると思うのですが、そういう問題を凝縮したのがPTA問題ではないかとすら見ています。
キャスター
なるほど。
加藤
そういう意味でですね、今、全国で大きな流れとなっている、この任意加入への動きですね、東京都の動きもこの任意加入の動きの中のひとつの流れ、大きな動きですけれども、この任意加入への動きというのは、従来の日本の文化の弱い部分ですね、これを見直していこうという、そういう動きとしても注目できるのではないかと思っております。
キャスター
そうですね。PTAの在り方として、今後どうなっていくのか、注目ですね。
加藤さん、ありがとうございました。
加藤
今日はどうも大変ありがとうございました。
キャスター
こちらこそありがとうございました。文化学園大学教授の加藤薫さんに伺いました。
Twitterでも、「そんなにあるの?PTAの組織」というメッセージであるとか、「PTA
やってました」というメッセージもいただいております。ありがとうございます。
今朝の「聞きたい」でした。